行政が所管する許認可事業に対する不安や悩みを解決する人です
例えば、A(あなた)の会社(または個人事業主)が建設業事業者だとします。
長年に渡り元請先の協力事業者として関係を築いてきました。
ある時、元請先担当者から近年高まるコンプライアンスの観点から、今後協力事業者として取引を続けていくには請負う工事に関する建設業許可を受けていなければ工事を発注しないと言われました。
Aは突然のことで驚いてしまいます。
何故? 今まで工事に大きなミスもなく元請とは良好な関係だったのに・・・
建設業法上、建設業許可は全ての建設事業者が受ける必要はありません。
一工事500万円以上の工事を請負う場合には建設業許可が必要です。500万円未満の工事のみを請負う建設事業者は、建設業許可がなくても全く問題はないのです。
しかし、これはあくまでも法律上の制度であって、実社会の取引きとはイコールではないんですね。
最近は、工事請負金額に関係なく、協力事業者になるのであれば建設業許可を受けるように元請先から注文をつけられることが珍しくありません。
こんな時、お役に立てるのが行政書士です。
字面からはイメージ出来ない行政書士
このサイトに辿り着いた方は、少なからず行政書士がどのようなものかぼんやりと分かっているかと思います。
飲食店を始めるときに保健所へ手続きをしてくれる人、相続の手続をしてくれる人、役所に提出する小難しい書類を作ってくれる人など、漠然としたイメージを持たれているのではないでしょうか。
もちろん、そのイメージで間違ってはいないのですがちょっと抽象的ですね。
テレビによく出てくる弁護士や税理士の方がずっと分かりやすいでしょう。名称のとおりですから。
行政書士は司法書士とよく間違われます。
突然、司法書士という名称を出しましたが、両者を混同している人は大多数存在しています。
司法書士が何をしてくれる人かざっくり言えば、不動産の権利の登記をしてくれる人です。
不動産の権利の登記・・・つまり、土地や家の名義人などを登録する手続きをしてくれるんです。
他にも会社に関する手続きなどをしていますが、一般的にはこれだけ知っていればまず困りません
では、行政書士は何をしてくれる人でしょうか。
先の見出しにもありましたが、ざっくり言えば許認可に関する手続きをしてくれる人・・・・・ざっくりし過ぎですね。
行政書士認知度はハッキリ言って低いです
私の顧客にヒアリングしたところ、みなさん最初はこんなイメージだったそうです。
建設業者を例にしてみました。
小規模建設事業者のAは元請の担当者に半年間の期限を定められ、なるべく早く建設業許可を受けるように言われました。
とは言え、建設工事に関することならともかく、許可についての知識は持ち合わせていません。
そこで、最近実家の建設業を継いだ若手女性経営者のBに相談することにしました。
この前、元請に建設業許可を受けろって言われてさ~ そんなこと言われたの今まで10年以上一緒に仕事をしてきて初めてだよ。Bのとこは許可受けてんの?
うちは一年前に許可受けたよ。
えっ!初耳だよ。いつの間に・・・やっぱり元請からの要求?
やっぱり、大きい仕事して稼ぎたいって考えてね~ 工事の上限金額を決められていると伸びしろが抑えられている感じがするし。
そうなんだ。。ところで許可って簡単に受けられるの?
どうだろ・・・簡単なのかな? 正直よく分からないんだよね。
はっ? どういうこと?
いや、自分でやったんじゃなくて。。人に頼んで全部やってもらったから。
誰? そんな人いるの?
行政書士に頼んだよ。
行政書士?
そう。
何してる人?
詳しくは知らないけど、建設業許可とかいろいろな許可について詳しく教えてくれたよ。代理で申請もしてくれるし。
へえ~ ちょっと紹介してよ。話を聞いてみたい。
いいけど、ネットで探した方がいいかもね。
何となく一歩を踏み出したA。早速ネットで調べてみると、大量の行政書士事務所のHPがヒットした。
建設業以外にも飲食業、産業廃棄物処理業、外国人就労ビザなど様々な許認可申請を取扱う行政書士事務所があり、Aは自分の知らない世界を垣間見た気がした。
余談ですが、行政機関で働いている人の中にも行政書士が何なのか少しも理解していない人はたくさんいます。
HPに謳われている専門とは?
行政書士事務所のHPには、ほぼほぼ○○専門といったキャッチフレーズが使われています。
多いのは、建設業許可申請専門、産業廃棄物収集運搬業許可申請専門、外国人就労ビザ専門、自動車手続専門、相続専門など。
これらは王道的な業務で、古典業務と言われているものです。それだけ市場規模が大きく参入事務所も多いです。相続などは、民法の知識をベースに業務を進めるため、試験合格した新規開業者にとってハードルの低い参入しやすい業務となっています。
相続とは違い、産業廃棄物収集運搬業許可または産業廃棄物処分業許可、建設業許可、外国人就労ビザなどは、開業後いきなり業務に着手できるジャンルではないため、若干参入ハードルが高いものになります。
更には、金融商品取引業を始めとする金融系許認可、医療系許認可などは上述の許認可業務とは一線を画すものであって、一般的な専門を謳っている事務所が参入しているケースはほとんどないのが実態です。
専門と謳うからにはそれなりに自信があると判断できますが、マーケティング的に専門性を強調している事務所も多いため、ある日突然専門性が変わっていることも珍しくはないですね。
専門性を掲げるこの手のキャッチフレーズは、釣りだと思ってもあながち間違いではなかったりするんです。
依頼する行政書士によって仕事に差はありますか?
あります。依頼する行政書士を間違えると時間と金のロスです。
HPを持っているというより一般的な事務所であれば、電話、メールをすれば何らかの形で応対してくれるでしょう。
というよりも、HPを持たない事務所は避けた方が良い場合も多いです。
こういった事務所は、地縁による地元の仕事を優先し、儲かりにくい一見客を軽視する傾向が高いです。
私の顧客の中にも、自宅近くの事務所にある許可について問い合わせしたところ、ろくに話も聞かず、「ダメじゃね。」と一蹴されたケースもありました。
もちろんその後、私の方で許可受けるサポートをし、現在その事業を展開されています。
この業界、結構アナログ推奨的なところがあって、HPよりもタウンページ広告のほうが効果高いと信じている人が大勢います。新人向け研修会で、「HPを作るな!」とか「広告はするな」と声高に叫ぶ現役講師もいるんです。
FAXが最新のITツールと信じて疑わない人も数多く存在しています。
私的には、HPを持たない事務所にはこの手の行政書士が多いと感じているので、これから行政書士に相談をしようと考えている方は注意したほうが良いです。
最近はHPを持たない代わりにSNSやYouTubeを使い、DMで新規顧客獲得をしている事務所もチラホラあります。HPやYouTubeで業務解説をおこなっている事務所など情報発信している事務所はお薦めできる事務所と言えますね。
また、他の士業、例えば税理士や土地家屋調査士、司法書士事務所と兼業で看板を掲げている事務所も多々あります。
これらは、本業との兼ね合いで、依頼を受けるケースがほとんどです。つまり、税理士であれば、顧問先の建設業者、産業廃棄物業者など定期的に業務が発生するジャンル、土地家屋調査士・司法書士であれば、農地転用、開発許可といったジャンルです。
本業+αで報酬が発生するため、好まれる経営スタイルのようですが、取扱い業務は極めて狭い範囲になるので、ある意味特定ジャンルに突出した事務所で、客を選びます。
役所に対しておこなう申請は、本人申請が基本です
行政機関に対しておこなう申請等は、ほとんど全て本人申請を基本としています。
行政書士に依頼して丸投げは、後々のトラブルの元となるので絶対やめた方がいいです。申請内容については、十分な説明を受けるか、逐次説明を受けることをお薦めします。
申請後、実際とは異なった内容で申請したことが発覚した場合、指導等による補正で済めば良いのですが、最悪虚偽申請と判断されることもあり、この場合ペナルティを負うので、その後の事業計画等に支障をきたすだけでなく、業法に依っては罰金等の刑罰を受けるものもあります。
申請書その他の書類を作成してもらっても、自分で作成したと同等の理解はマストです。
通常、行政書士は申請を代理人としての委任契約を結んで行います。
しかし、申請のその効果は本人が受けます。窓口その他での役所側とのやり取りは行政書士がしていますが、それを本人が知る知らない関係なく、本人が法律上の効果を受けるんですね。
なので、丸投げして内容を全く知らないというのは危険です。
これは他の士業でも同じですよ。
結局何ができる人なの?
建設業、金融業、外食産業、製造業、産業廃棄物処分業、観光業その他の許認可を受けて展開する事業において、その事業を経営または従事してない立場で、その事業の特性、実務、業法の解釈・判断、行政対応ができる人です。
しかし、禁じられている行為も多数あり、法律上の代理人として他人との交渉、訴訟の代理その他法律で禁じられている行為はすることができません。間違っても代金の取立て、示談・契約交渉、刑事告訴などを依頼してはいけませんし、引受ける行政書士がいたらヤバいと思ってください。
行政書士法
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、時期的方式その他他人の近くによつては認識することができない方式で作られるきろくであつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
第一条の三 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りではない。
一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続き及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。次号において同じ。)に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。
二 前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
三 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
四 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
2 前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を終了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。
「e-Gov」より