金融サービス仲介業とは、銀行、証券、保険、貸金業など、複数の金融サービスをまとめて取り扱える仲介業のことです。
従来からある仲介業との違い
銀行、証券会社、保険会社、貸金業に代表される金融サービスの提供業者は、それぞれの業法(銀行法、金融商品取引法、保険業法、貸金業法)に規制され、免許または許可を受けなければ事業をおこなうことはできません。
これら金融サービス事業者と顧客とは、当然直接取引ができます。それとは別に、金融事業者と顧客との間をつなぐ仲介業者が存在していることはあまり知られてはいないのではないでしょうか。
銀行には銀行代理業、証券会社には金融商品仲介業、保険会社には保険募集人・保険仲立人、といった仲介業者が、それぞれの所属する金融事業者のために顧客との取引を媒介しています。
例えば、保険会社の仲介業者として、保険代理店があちこちに出店しているのでよくご存じと思います。
自動車を所有していれば、どこかしらの保険代理店を経由し、保険契約を締結するのが一般的でしょう。

従来の仲介制度では、各業界を横断して金融の仲介をおこなうには、それぞれの業法に規定される仲介業の登録等をする必要がありました。
しかし、金融サービス仲介業の創設により、1つの登録で多様な金融商品を扱えることができるようになりました。わざわざ複数の登録・許可を必要としないため、各事業の幅が広がることが期待されています。
金融サービス仲介業における「銀行業務」の範囲
金融サービス仲介業者がおこなえる銀行業務は主に次のようなものになります。
- 預金の受け入れの媒介業務
- 資金の貸し付けの媒介業務
- 為替取引の媒介業務
※ただし、これらの業務であっても金融サービス提供法第11条2項に規定される、「当該契約について顧客に対し高度に専門的な説明を必要とするものとして政令で定めるもの」は業務範囲外になります。
預金受け入れ業務(預金媒介業務)の内容
金融サービス仲介業者は、次に掲げる金融機関のためにおこなう預金等の受入れを内容とする契約の締結の媒介をすることができます。
- 銀行
- 長期信用銀行(令和7年2月現在、存在しない)
- 信用金庫
- 信用金庫連合会
- 労働金庫
- 労働金庫連合会
- 信用協同組合
- 協同組合連合会
- 農業協同組合
- 農業協同組合連合会
- 漁業協同組合
- 漁業協同組合連合会
- 水産加工業協同組合
- 水産加工業協同組合連合会
- 農林中央金庫
※ ただし、金融サービス仲介業者自身が口座を預かることはできません。一時的に銀行への媒介のみです。また、金融サービス仲介業者は貸付業務の実行や審査業務をおこないません。銀行との契約の媒介のみをおこないます。
取扱いできない業務
金融サービス仲介業という名称通り、サービスの仲介をおこなうための制度なため、当事者の代理行為をすることはできません。主に次の行為は禁止事項とされています。
- 預金口座等を直接開設すること
- 貸付審査、融資等の直接に資金融通をする行為
- 銀行等の代理店として契約をおこなうこと
金融サービス仲介業における「証券業務」の範囲
証券業務の範囲は、原則仲介をおこなうものにとどまっています。主に次の証券仲介業務をおこなえます。
✅証券口座の開設の窓口
- 証券会社の口座開設手続きをご案内・サポート
✅株式・債券・投資利益などの取引の仲介
- 株式(上場株・未上場株)の取引の媒介
- 債券(任意・社債など)の取引の媒介
- 投資信託・ETF(上場投資信託)の媒介
- **REIT(不動産投資信託)**の媒介
✅証券会社が提供する金融商品の紹介
- 複数の証券会社の商品の比較・案内
- 証券会社が提供する投資商品・サービスの情報提供
✅一般的な投資情報の提供
- 市場ニュースや基礎的な投資知識の提供
✅証券会社への取引注文の取次ぎ
- 顧客の取引注文を証券会社に取り次ぐ(※注文の最終処理は証券会社が行う)
取扱いできない業務
主に次の業務はをすることはできません。
- 投資の助言・推奨
- 顧客に代わり証券の売買をすること
- 投資一任契約
- 証券会社の代理人となって顧客と契約を締結すること
まとめ
金融サービス仲介業制度は始まって2021年11月法施行されてから数年しか経っていないため、市場が成熟しているとは言えません。金融事業以外の事業者が参入するにはハードルの高さがあります。
ITインフラ面、商品面の企画・整備の制約、仲介業登録にも条件があり小規模事業者等では安易に算入できない一面もあります。
しかし、家計簿アプリ、住宅ローン等、国民に身近な金融サービスは金融業以外の業種で関係することも多いのは事実です。例えば、不動産会社、住宅メーカー等が仲介業登録することで、不動産ローンの販売を媒介する形で、顧客に有意なローンを紹介できます。さらには、金利に関しても取次とは違い、より顧客によりそった具体的な提案が可能になるでしょう。